誉田屋源兵衛とシャネルが織りなす奇跡の邂逅！なぜ世界のシャネルが京都の老舗帯屋に惚れ込んだのか｜HAUTE-LINEUP(オートラインナップ)：エルメス・ヴィトン・ハイブランド

280年の歴史を誇る京都の老舗帯屋「誉田屋源兵衛」と、世界的なラグジュアリーブランド「シャネル」。一見すると接点のなさそうな二つのブランドが、実は深い絆で結ばれていることをご存知でしょうか。2013年から始まったKYOTOGRAPHIE京都国際写真祭において、シャネルが協賛し誉田屋源兵衛が会場を提供するという形で、両者の関係は年々深まっています。

さらに驚くべきは、シャネル本社から経営陣を含む社員100名が研修のために誉田屋源兵衛を訪問したという事実です。渡航費だけでも莫大な費用がかかる中、なぜシャネルはこれほどまでに誉田屋源兵衛に注目するのでしょうか。その背景には、日本の職人技への深い敬意と、ものづくりに対する共通の価値観があるのです。

この記事のポイント
✓ シャネルと誉田屋源兵衛の具体的なコラボレーション内容がわかる
✓ KYOTOGRAPHIE京都国際写真祭での両者の関係性が理解できる
✓ 誉田屋源兵衛が世界のラグジュアリーブランドから注目される理由がわかる
✓ 十代目山口源兵衛氏の革新的なものづくりの秘密が明らかになる

誉田屋源兵衛とシャネルの奇跡的な出会いとその軌跡

シャネルが誉田屋源兵衛を選んだ驚きの理由とは
KYOTOGRAPHIE京都国際写真祭で始まった美しい協働
シャネル社員100名が京都研修を行った真の目的
世界のトップメゾンが認める誉田屋源兵衛の技術力
英国立ヴィクトリア&アルバート博物館が永久所蔵した理由
十代目山口源兵衛氏とシャネルジャパン社長の歴史的対談

シャネルが誉田屋源兵衛を選んだ驚きの理由とは

シャネルと誉田屋源兵衛の関係は、偶然から始まった奇跡的な出会いでした。 十代目山口源兵衛氏によると、「最初にたまたまシャネルがここでやりたいとおっしゃって、そのまま続いている」とのことです。この何気ない発言の背景には、シャネルが誉田屋源兵衛の建物と技術に一目惚れしたという事実があります。

明治40年から10年余りかけて建てられた誉田屋源兵衛の本社建物は、築100年を超える貴重な町屋建築です。間口からは想像もつかないほどの敷地が広がる大店町屋で、宮大工の名棟梁、三上吉兵衛による貴重な建築となっています。この歴史的価値と美しさが、シャネルの美意識と共鳴したのでしょう。

🏢 誉田屋源兵衛の建物の特徴

建築要素	詳細
建築年代	明治40年～大正期（約100年前）
設計者	宮大工の名棟梁・三上吉兵衛
構造	大店町屋（間口からは想像できない奥行き）
特色	竹院の間、黒蔵など複数の展示空間

シャネルがアパレル会社として帯屋との共通点を見出したという推測もありますが、実際にはもっと深い部分での価値観の共有があったようです。280年を超える歴史の中で培われた「計りて作らず　本物は残りて候」という家訓は、シャネルが大切にする品質へのこだわりと通じるものがあります。

さらに興味深いのは、海外のデザイナーが誉田屋源兵衛を訪れた際のエピソードです。ある有名なデザイナーは1時間の予定だったにも関わらず、結局5時間も滞在し、「源兵衛さんの帯は全部欲しい」と言ったそうです。このような熱狂的な反応は、誉田屋源兵衛の作品が持つ魅力の証明でもあります。

KYOTOGRAPHIE京都国際写真祭で始まった美しい協働

2013年から始まったKYOTOGRAPHIE京都国際写真祭において、シャネルと誉田屋源兵衛の協働は年々発展を遂げています。この写真祭は、京都が最も美しい春の時期に、寺社や町家など京都ならではのロケーションを舞台に開催される国際的なイベントです。

📸 KYOTOGRAPHIE での主な展覧会

年度	展覧会名	展示場所	特徴
2015年	Alaska マルクリブー写真展	黒蔵	雪原の世界を黒壁で表現
2017年	MEMENTO MORI ロバートメイプルソープ写真展	竹院の間	ピーターマリーノコレクション
2024年	Welcome to Birdhead World Again	竹院の間・黒蔵	中国のアートユニット作品

シャネル・ネクサス・ホールは写真祭のスタートから参加しており、誉田屋源兵衛の空間を活用した展覧会を継続的に開催しています。特に印象的なのは、2015年の「Alaska マルクリブー写真展」です。フランスを代表する写真家マルク・リブーの雪原作品を、誉田屋源兵衛の「黒蔵」という墨色に塗られた空間で展示することで、新旧が交差する京都ならではの美の表現を実現しました。

この協働の素晴らしさは、単なる会場提供を超えた文化的価値の創造にあります。280年の歴史を持つ日本の伝統空間に、現代の国際的なアート作品を展示することで、時代を超えた美の対話が生まれているのです。

シャネルが毎年誉田屋源兵衛での展示を継続する理由は、この空間が持つ独特の魅力にあります。黒蔵の墨色の壁面や竹院の間の伝統的な和室は、写真作品に新たな表情を与え、観る人に深い印象を残します。これは現代的な美術館やギャラリーでは決して得られない体験なのです。

シャネル社員100名が京都研修を行った真の目的

シャネル本社から経営陣以下、社員100名が研修のために誉田屋源兵衛を訪問したという事実は、両者の関係の深さを物語っています。渡航費だけでも莫大な費用がかかることを考えると、この研修がシャネルにとって極めて重要な意味を持っていたことがわかります。

この研修の真の目的は、おそらく日本の職人技とものづくりの精神を学ぶことでした。シャネルは世界的なラグジュアリーブランドとして、品質への妥協のないこだわりを大切にしています。誉田屋源兵衛の「計りて作らず　本物は残りて候」という家訓は、まさにシャネルが追求する価値観と合致するものです。

💼 シャネル研修で学べる要素

学習項目	誉田屋源兵衛での体験内容
職人技の継承	6人チームによる分業制の実際
素材へのこだわり	孔雀の羽根、ラピスラズリなど特殊素材の活用
伝統と革新の融合	古典技法を用いた現代的な表現
品質への妥協なき姿勢	「儲けを考えていては良い物は作れない」の実践

特に注目すべきは、西欧が失った手仕事の伝統を日本が保持していることです。山口源兵衛氏によると、「産業革命が欧米よりも100年遅れたおかげで、あちらは手仕事がみんな消えてしまって、繭すら何だかわからないようになりました」とのこと。日本の鎖国が結果的に手仕事の伝統を守ったという皮肉な歴史があります。

シャネルの社員たちは、誉田屋源兵衛で機械化に頼らない職人の技を目の当たりにしたはずです。明治5〜6年に西陣にジャカード織機が導入された際も、職人たちは「機械でやったらあかんやろ、手で一越ずつ魂込めるもんや」と抵抗したという逸話があります。この精神は現在も受け継がれており、シャネルが大切にするクラフツマンシップの本質を体現しています。

世界のトップメゾンが認める誉田屋源兵衛の技術力

グッチ、エルメス、シャネルなどのハイクラスブランドが誉田屋源兵衛に注目する理由は、その比類なき技術力にあります。ヨーロッパの多くのトップメゾンが京都の室町三条にある誉田屋源兵衛本社を見学に訪れるほど、その技術は世界的に評価されています。

🌟 誉田屋源兵衛の革新的技術例

技術・作品	詳細	革新性
孔雀羽根織	孔雀の羽根で織った帯	上杉謙信の陣羽織を現代に再現
宗達織	俵屋宗達の絵画を織物で表現	絵画の「たらし込み」技法を織りで実現
ラピスラズリ染め	宝石を染料にした帯	日光東照宮の極彩色装飾からインスピレーション
小石丸製品	皇室の蚕を使用	規制緩和後いち早く製品化

特に孔雀羽根織の製作エピソードは、誉田屋源兵衛の妥協なき姿勢を象徴しています。上杉謙信が450年前に作らせた孔雀の羽根を使った陣羽織の実物を参考に、現代の技術で再現したのです。しかし、この帯を織った職人は完成後に「もう二度としませんから、これが完成したあと、もう1本織れとおっしゃるなら今やめます」と言って引退したそうです。

見る角度によって色が変わるこの孔雀羽根織は、職人が真面目にすべて同じ方向に羽根を揃えたため実現した効果です。緑、青、赤っぽいアンバー、黄色とさまざまな色が見えるのは、職人の技術と情熱の賜物なのです。

また、俵屋宗達の絵画を織物で表現する試みも画期的です。たらし込みという、にじみを使った手法で描かれた宗達の作品を、タテとヨコの糸で表現するという前例のない挑戦でした。山口源兵衛氏は「機の都合でものを考えていない。宗達に笑われないものを作るということが前提であって、機をそれに合わせていく」と語っています。

英国立ヴィクトリア&アルバート博物館が永久所蔵した理由

**2016年、誉田屋源兵衛の作品が英国立ヴィクトリア&アルバート博物館のパーマネントコレクション（永久所蔵品）**となりました。現代で作られた帯が英国国立博物館の永久所蔵品となるのは、これが初めてのことです。この快挙は、誉田屋源兵衛の技術と芸術性が世界的に認められた証拠といえるでしょう。

🏛️ 英国立V&A博物館永久所蔵の意義

項目	内容
所蔵作品数	7作品
歴史的意義	現代の帯として初の永久所蔵
評価ポイント	伝統技法と現代的美意識の融合
国際的地位	日本の工芸品としての最高評価

ヴィクトリア&アルバート博物館は、世界最大級の装飾芸術とデザインの博物館として知られています。この権威ある博物館が誉田屋源兵衛の作品を永久所蔵品として選んだということは、単なる工芸品を超えた芸術作品としての価値を認めたということです。

永久所蔵品に選ばれた理由として考えられるのは、伝統と革新の絶妙なバランスです。280年の歴史で培われた伝統技法を基盤としながら、現代的な感性とデザインを融合させた作品群は、まさに現代の工芸芸術の到達点を示しています。

さらに、素材への革新的なアプローチも評価されたでしょう。孔雀の羽根やラピスラズリなど、通常の織物では使用されない素材を巧みに織り込む技術は、世界でも類を見ないものです。これらの作品は、日本の職人技の素晴らしさを世界に示すとともに、現代工芸の新たな可能性を提示しています。

十代目山口源兵衛氏の独創的な美学も、国際的な評価につながっています。「織物には凹凸がありますよね。悪いけど、宗達がなんぼ天才といっても、あちらは絵画だから凹凸がありません。そやから本当は私が勝つはずなんです」という発言からも、既存の枠組みにとらわれない革新的な思考が伺えます。

十代目山口源兵衛氏とシャネルジャパン社長の歴史的対談

2015年、シャネルジャパン社長リシャール・コラス氏と十代目山口源兵衛氏の対談が実現しました。この対談は、東西の美意識とものづくりの哲学を交流させる貴重な機会となりました。両者の対話からは、品質への妥協なき追求という共通の価値観が浮かび上がってきます。

👥 対談で語られたであろう主要テーマ

テーマ	山口源兵衛氏の視点	シャネルの視点
職人技の価値	手仕事による魂の込め方	クラフツマンシップの重要性
伝統と革新	280年の歴史を現代に活かす方法	タイムレスな美の追求
素材へのこだわり	孔雀羽根、ラピスラズリなど特殊素材	最高品質の素材選択
美の哲学	「見えない色が肝心」という考え	エレガンスの本質

山口源兵衛氏が語る**「見えない色」の重要性**は、シャネルの美学とも通じるものがあります。「現在では色が色として見えるようになっていますが、そうなると、目に見えているものしか見なくなります。それを何とかしたいですね。ますます、見えない色が肝心になったと思っています」という言葉は、表面的な美しさを超えた深い美の追求を示しています。

染色の歴史についての山口氏の洞察も興味深いものです。「染色の最初は鉱物染めなんです。真っ赤な赤土で染めてもわずかに黄色くなるだけで、明らかに色を求めているわけではない。つまり、大地のエネルギーをいただくためにそうしていた」という発言からは、色彩に対する哲学的なアプローチが伺えます。

この対談を通じて、シャネルと誉田屋源兵衛の関係は単なるビジネスパートナーシップを超えた文化交流となったのです。両者とも「本物を作る」ことへの強い信念を持ち、時間をかけて丁寧にものづくりを行うという共通の価値観を持っています。

誉田屋源兵衛とシャネルが共鳴する革新的ものづくりの世界

280年の歴史が生み出す唯一無二の帯づくりとは
誉田屋源兵衛の浴衣が2025年も注目される理由
ユナイテッドアローズとのコラボで見せた新境地
室町三条のアクセスと見学の可能性について
半幅帯や帯締めなど小物類の魅力と価格帯
山口源兵衛氏のプロフィールと経歴の全貌
まとめ：誉田屋源兵衛とシャネルの未来への展望

280年の歴史が生み出す唯一無二の帯づくりとは

誉田屋源兵衛の帯づくりは、280年以上にわたって受け継がれてきた伝統技法と革新的な挑戦の結晶です。1738年（元文年間）に初代矢代庄五郎により創業された「南矢代誉田屋」から始まったこの織元は、現在の十代目山口源兵衛氏まで、一貫して「本物」を追求し続けています。

帯づくりの工程は完全な分業制で行われており、一本の帯を織るのにだいたい6人のチームを組みます。織りの設計図である紋図を書く職人をはじめ、それぞれの分野のエキスパートが揃わないと完成しません。「完成したら、誰のおかげで完成度が落ちたかというのは見ればわかってしまいますから大変です」と山口氏が語るように、全員が最高レベルの技術を求められるのです。

🎨 誉田屋源兵衛の代表的な帯作品

作品名	特徴	制作エピソード
孔雀羽根織	孔雀の羽根で織った帯	職人が完成後に引退を宣言
宗達織	俵屋宗達の絵画を織物で表現	10種類以上の濃淡の墨染め糸を使用
ラピスラズリ織	宝石を染料にした帯	日光東照宮の極彩色からインスピレーション
小石丸織	皇室の蚕を使用した帯	規制緩和後いち早く製品化

価格については公式には明示されていませんが、これらの作品が一般的な帯とは比較にならない価値を持つことは確かです。特に、現在では入手困難な素材を使用したり、引退した職人の最後の作品であったりする場合、その価値は計り知れません。山口氏自身も海外の有名デザイナーから「源兵衛さんの帯は全部欲しい」と言われた際、「全部非売品です」と答えたというエピソードがあります。

**家訓「計りて作らず　本物は残りて候」**が示すように、誉田屋源兵衛では儲けを第一に考えるのではなく、後世に残る本物を作ることを最優先にしています。この哲学が、280年という長い歴史の中で培われた技術と相まって、世界でも類を見ない芸術作品としての帯を生み出しているのです。

現在の十代目山口源兵衛氏は、20代後半から俵屋宗達に心酔し、その作品を織物で表現することに挑戦しています。「宗達に笑われないものを作る」という強い信念のもと、機の都合ではなく表現したいものに合わせて機を調整するという革新的なアプローチを取っています。

誉田屋源兵衛の浴衣が2025年も注目される理由

誉田屋源兵衛の浴衣は、帯で培った技術と美意識を活かした特別な存在として、2025年も多くの人から注目を集めています。十代目山口源兵衛氏独自の感性が随所に盛り込まれた芸術性の高い浴衣は、男女問わず幅広い年齢層から支持されています。

特に人気が高いのは**「破れ格子」**の浴衣です。この柄は山口源兵衛氏も愛用しており、「誉田屋といえばこの柄」と連想する人も多い代表的なデザインです。芸能人の方にも愛用者が多く、テレビで見かけたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

👘 誉田屋源兵衛 2025年注目の浴衣ライン

柄名	特徴	ターゲット
破れ格子	社長愛用の代表柄	通好みの大人
ハイヒール	カラフルなモダン柄	ファッション感度の高い女性
ひまわり	モノトーン調のモダンアレンジ	個性を求める人
月照乱華	古典柄の現代的解釈	伝統美を愛する人
さぎからす	趣ある和の美しさ	粋を求める大人

誉田屋の浴衣が特別である理由は、古典柄に現代感覚の色や素材、デザインを掛け合わせている点にあります。例えば、ひまわりの浴衣では、本来明るいイメージの強いひまわりをあえてモノトーン調に描くことで、夏らしさと洗練されたモダンな雰囲気を両立させています。

また、ハイヒール柄の浴衣は、浴衣の定番である和柄や花柄が多い中で、確実に人目を引く個性的なデザインです。このような斬新な発想は、山口源兵衛氏の「既存の枠組みにとらわれない」創作姿勢から生まれています。

2025年も注目される理由の一つは、サステナビリティへの意識の高まりです。誉田屋源兵衛の浴衣は、大量生産品とは異なり、職人の手によって丁寧に作られた一点ものの価値を持っています。長く愛用できる品質と、時代を超えたデザイン性は、現代の消費者が求める価値観と合致しています。

きもの永見との深い関係も、誉田屋浴衣の魅力を支えています。6代目永見吉平と30代の山口源兵衛氏の出会いから続く両社の関係は、単なる取引を超えた深いパートナーシップです。誉田屋の新作発表会の翌月には、きもの永見のお客様にいち早く見ていただけるよう展示が行われるなど、品質の高い浴衣を適切に紹介する体制が整っています。

ユナイテッドアローズとのコラボで見せた新境地

2008年、誉田屋源兵衛とユナイテッドアローズのコラボレーションは、伝統的な呉服の世界と現代ファッションの融合という画期的な試みでした。このコラボレーションで制作された男性用着物は、東京コレクション（JFW）において「傾奇者達之系譜」というタイトルでコレクション形式にて発表されました。

「傾奇者（かぶきもの）」という名前が示すように、既存の常識を破る革新的なスタイルを提案したこのコラボレーションは、着物業界に大きなインパクトを与えました。江戸時代の傾奇者たちが派手で斬新な装いで人々を驚かせたように、現代においても着物の新たな可能性を示したのです。

🤝 ユナイテッドアローズとのコラボレーション詳細

項目	内容
実施年	2008年
商品	男性用着物
発表場所	東京コレクション（JFW）
コレクション名	「傾奇者達之系譜」
コンセプト	伝統と現代ファッションの融合

このコラボレーションが成功した理由の一つは、両ブランドの品質への共通した価値観でした。ユナイテッドアローズは「お客様にとって新しく、質の良いものを提案する」という理念を持っており、誉田屋源兵衛の「本物は残りて候」という家訓と共鳴するものがありました。

男性用着物という選択も興味深いポイントです。現代において着物を着る男性は少数派ですが、だからこそ新たな市場を開拓する可能性を秘めています。誉田屋源兵衛の技術力とユナイテッドアローズのマーケティング力が組み合わさることで、着物に対する新しい価値観を提示できたのです。

東京コレクションでの発表という形式も、着物の国際化という観点で重要な意味を持ちました。通常、着物は和装業界内でのみ発表されることが多いのですが、ファッション業界全体に向けて発信することで、より広い層への訴求が可能になりました。

このコラボレーションの成功は、誉田屋源兵衛の柔軟性と革新性を証明するものでもあります。280年の歴史を持つ老舗でありながら、時代の変化に対応し、新しい挑戦を続ける姿勢は、多くの伝統産業にとっても示唆に富むものです。

室町三条のアクセスと見学の可能性について

誉田屋源兵衛の本社は、京都市中京区室町通三条下ル西側に位置しています。京都駅から北に約10分という好立地にあり、呉服問屋が立ち並ぶ室町通という、まさに京都の織物文化の中心地に店を構えています。

🚃 誉田屋源兵衛へのアクセス情報

交通手段	詳細
最寄り駅	地下鉄烏丸線「烏丸御池駅」
徒歩時間	駅から約5分
住所	京都府京都市中京区室町通三条下ル西側
京都駅からの所要時間	約10分

見学の可能性については、誉田屋源兵衛が一般的な観光地ではなく、実際に営業を行っている帯問屋であることを理解しておく必要があります。KYOTOGRAPHIE京都国際写真祭などの特別なイベント時には一般公開されることがありますが、普段は事前の予約や紹介が必要と考えられます。

建物の見どころは数多くあります。明治40年から大正期にかけて建てられた貴重な町屋建築は、間口からは想像できないほどの奥行きを持つ大店町屋の典型例です。宮大工の名棟梁、三上吉兵衛による建築は、それ自体が文化財級の価値を持っています。

特に注目すべきは**「竹院の間」と「黒蔵」**です。竹院の間は伝統的な和室の美しさを保ちながら、現代的な展示にも対応できる多目的空間となっています。一方、黒蔵は墨色に塗られた印象的な空間で、六角形のドームが特徴的な和洋のバランスが美しい建物です。

室町通周辺の文化的価値も見逃せません。この地域は京都の呉服文化の中心地として栄えてきた歴史があり、誉田屋源兵衛以外にも多くの老舗織物店が軒を連ねています。京都の伝統産業を理解するうえで、この地域全体を散策することは非常に有意義です。

見学を希望する場合は、まず公式な連絡先を通じて問い合わせを行うことをお勧めします。特に、KYOTOGRAPHIE等のイベント情報をチェックし、一般公開される機会を狙うのが現実的でしょう。また、きもの永見などの取扱店を通じて相談することも一つの方法かもしれません。

半幅帯や帯締めなど小物類の魅力と価格帯

誉田屋源兵衛では、メインの袋帯や名古屋帯だけでなく、半幅帯や帯締めなどの小物類も製作しています。これらの小物は、誉田屋源兵衛の技術と美意識を比較的手に取りやすい形で体験できる貴重なアイテムです。

半幅帯はカジュアルな着物や浴衣に合わせることができ、誉田屋源兵衛の独特なデザインセンスを日常的に楽しむことができます。破れ格子などの代表的な柄から、より現代的なモチーフまで、幅広いデザインが展開されているようです。

📿 誉田屋源兵衛の小物類ラインナップ

アイテム	特徴	用途
半幅帯	カジュアル向けの帯	浴衣、小紋、紬など
帯締め	着物の格調を高める小物	フォーマルからカジュアルまで
帯揚げ	着物のアクセント	季節感や個性の演出
その他小物	伝統技法を活かした逸品	着物全体のコーディネート

価格帯については、具体的な数字は公開されていませんが、一般的な呉服小物とは異なる価格設定になっていると推測されます。誉田屋源兵衛の製品は「計りて作らず」の家訓に基づいて制作されているため、大量生産品とは比較にならない手間と時間がかけられています。

帯締めの魅力は、着物の印象を大きく左右する重要なアイテムである点です。誉田屋源兵衛の帯締めは、おそらく厳選された素材と熟練職人の技術によって制作されており、着物全体の格を上げる効果が期待できます。

小物類の購入方法については、きもの永見などの正規取扱店での相談が最も確実でしょう。誉田屋源兵衛とkimono永見の深い関係性から、適切なアドバイスと商品の紹介を受けることができると考えられます。

選び方のポイントとして、自分の着物のスタイルや好みに合わせることが重要です。誉田屋源兵衛の小物は個性的なデザインが多いため、全体のコーディネートを考慮して選ぶ必要があります。また、長く愛用できる品質を持っているため、流行に左右されない普遍的な美しさを基準に選ぶことをお勧めします。

山口源兵衛氏のプロフィールと経歴の全貌

**十代目山口源兵衛氏（1948年京都市中京区室町生まれ）**は、1979年に誉田屋源兵衛の名跡を継承し、40年以上にわたって京都の織物文化を牽引してきました。彼の経歴は、伝統的な帯屋から革新的な「帯匠」への転換という、日本の伝統産業における稀有な成功例として注目されています。

襲名前から現在までの歩みを時系列で整理すると、その革新的な活動の軌跡が見えてきます。1985年には全国原始布を素材とした個展を開催し、以降インドや東南アジアの野蚕糸を帯に用いるなど、グローバルな素材への挑戦を続けています。

👨‍🎨 山口源兵衛氏の主要な活動歴

年代	活動内容	意義
1979年	十代目誉田屋源兵衛襲名	家業の継承と革新の始まり
1985年	原始布を素材とした個展開催	素材への革新的アプローチ
2002年	小石丸の着物制作・展示	皇室蚕の一般化への挑戦
2003年	日本文化デザイン大賞受賞	文化的価値の公的認知
2006年	コシノヒロコ、隈研吾とコラボ	異業種との創造的融合
2008年	ユナイテッドアローズとコラボ	ファッション業界への進出