「三陽商会とバーバリーが復活するのか?」と気になって検索している方も多いでしょう。結論から言うと、三陽商会とバーバリーの関係復活は現時点では実現していません。しかし、三陽商会自体は2015年の「バーバリーショック」から見事に復活を遂げています。
調査の結果、三陽商会は2023年2月期に7期ぶりの黒字転換を達成し、2024年2月期も3年連続の増収増益となりました。バーバリーを失った痛手から立ち直るために、大江社長が就任して行った構造改革が功を奏したのです。本記事では、バーバリーとの関係の真実から、三陽商会の復活戦略まで詳しく解説します。
この記事のポイント |
---|
✅ 三陽商会とバーバリーの関係復活の可能性と現状 |
✅ バーバリーライセンス終了の背景と影響 |
✅ 大江社長による構造改革の具体的成功要因 |
✅ 代替ブランド戦略と今後の展開予想 |
三陽商会とバーバリーの復活に関する真実
- 三陽商会とバーバリーの関係復活は現時点では実現していない
- バーバリーライセンス終了の背景と「バーバリーショック」の実態
- 三陽商会が選択した代替ブランド戦略とは
- 「ベイカー・ストリート」復活で新たな展開へ
- バーバリー時代の品質と価格帯を振り返る
- 現在の三陽商会ブランドラインナップ
三陽商会とバーバリーの関係復活は現時点では実現していない
三陽商会とバーバリーの関係復活を期待している方には残念なお知らせですが、現時点で両社の関係が復活する兆しは見られません。2015年6月にバーバリーとのライセンス契約が終了してから、約10年が経過していますが、再契約の話は公式に発表されていないのが現状です。
バーバリー側は、グローバル戦略の一環として直営化を推進しており、日本市場でも自社での事業展開を継続しています。一方、三陽商会は独自のブランド戦略で復活を遂げており、両社がそれぞれ異なる道を歩んでいることが明確になっています。
なぜ関係復活が困難なのかを考えると、以下の要因が挙げられます:
📊 バーバリー関係復活が困難な理由
要因 | 詳細 |
---|---|
バーバリーの戦略変更 | グローバル直営化路線を継続中 |
三陽商会の独立路線 | 自社ブランド戦略で成功を収めている |
市場環境の変化 | ライセンス事業よりも自社ブランドが重視される時代 |
契約条件の変化 | 以前とは異なる事業環境での再契約は複雑 |
三陽商会の現在の経営陣も、バーバリーへの依存から脱却することで真の独立性を獲得したと考えているようです。大江社長のインタビューでも「当たり前の手を打っただけ」と述べており、バーバリーに頼らない経営体制の構築に自信を見せています。
ただし、将来的に市場環境や両社の戦略が変化する可能性もあります。現在のところ、三陽商会は「マッキントッシュ」や独自ブランドで成功を収めているため、バーバリーとの関係復活は優先事項ではないと推測されます。
バーバリーライセンス終了の背景と「バーバリーショック」の実態
2015年のバーバリーライセンス契約終了は、三陽商会にとって**まさに「バーバリーショック」**と呼ばれる大きな打撃となりました。当時、バーバリー事業は三陽商会の売上高の約半分を占める屋台骨だったためです。
契約終了の背景には、バーバリー本社のグローバル戦略の変更がありました。バーバリーは世界的にライセンス事業を見直し、直営店舗での展開に軸足を移す方針を打ち出したのです。これは三陽商会に限った話ではなく、世界各地のライセンスパートナーとの関係を見直す動きの一環でした。
💥 バーバリーショックの実態
項目 | 影響内容 |
---|---|
売上高減少 | 2016年12月期は前年比30.6%の大幅減収 |
営業損益 | 前年6,577百万円の黒字から8,430百万円の赤字へ転落 |
継続期間 | 2022年2月期まで6期連続の営業赤字 |
最悪期 | 2021年2月期には営業赤字89億円を記録 |
この「バーバリーショック」の深刻さを物語るエピソードとして、中国人観光客の爆買い現象があります。大前研一氏の証言によると、東京・お台場のヴィーナスフォートでは、中国人観光客がバスで乗りつけて「バーバリー・ブルーレーベル」を問屋ができるほどの量を購入していく光景が見られたそうです。
三陽商会が築き上げたバーバリーブランドの価値は確かに高く、特に「バーバリー・ブルーレーベル」や「バーバリー・ブラックレーベル」は日本独自のラインとして大成功を収めていました。これらは本国バーバリーにはない、アジア人の体形や好みに合わせたオリジナル商品で、中国や東南アジアでも人気を博していました。
しかし、このような成功があっただけに、契約終了の衝撃は計り知れないものでした。調査の結果、三陽商会の株価は2015年以降大幅に下落し、一時は経営存続への懸念も持たれるほどの状況となったのです。
三陽商会が選択した代替ブランド戦略とは
バーバリー失った三陽商会が選択した代替戦略は、既存ブランドの強化と新ブランドの投入でした。現在の主力ブランドポートフォリオを見ると、バーバリーという「一本足打法」から脱却し、リスク分散を図った戦略が明確に見て取れます。
現在の基幹7ブランド戦略では、それぞれを売上高100億円規模に育てることを目標に掲げています:
🎯 三陽商会の基幹ブランド戦略
ブランド名 | 特徴 | 目標 |
---|---|---|
ブルーレーベル/ブラックレーベル・クレストブリッジ | バーバリーの後継的位置づけ | 売上高100億円規模 |
マッキントッシュ ロンドン | 英国伝統ブランド | 売上高100億円規模 |
マッキントッシュ フィロソフィー | カジュアルライン | 売上高100億円規模 |
ポール・スチュアート | アメリカントラッド | 売上高100億円規模 |
エポカ/エポカ ウォモ | イタリアンテイスト | 売上高100億円規模 |
特に注目すべきは、「マッキントッシュ」ブランドの活用です。マッキントッシュは英国の老舗ブランドで、レインコートの代名詞とも言える歴史あるブランドです。三陽商会はこのブランドのライセンスを活用し、バーバリーで培った英国系ブランドのノウハウを継承しています。
また、ブルーレーベル/ブラックレーベル・クレストブリッジは、バーバリー時代の「ブルーレーベル」「ブラックレーベル」の後継として位置づけられており、既存顧客の囲い込みを図っています。デザインテイストも英国風を基調としており、バーバリーファンの受け皿としての役割を果たしています。
EC事業の強化も重要な戦略の一つです。2016年度のEC売上高42億円から、2019年度に80億円を目指すという野心的な計画を立て、年率平均24%の成長を計画していました。デジタル化の波に乗り遅れないよう、オンライン販売にも力を入れているのです。
これらの戦略により、三陽商会は**「バーバリー一本足打法」のリスクから脱却**し、より安定した事業基盤の構築を目指しています。一つのブランドに依存する危険性を学んだ同社の、堅実な経営判断と言えるでしょう。
「ベイカー・ストリート」復活で新たな展開へ
三陽商会の新たな戦略として注目されるのが、約20年ぶりの「ベイカー・ストリート」復活です。このブランドは1975年から2003年まで展開されていた紳士服ブランドで、25~35歳を中心に高い支持を集めていました。
ベイカー・ストリート復活の背景には、「ザ・スコッチハウス」のライセンス契約終了があります。バーバリー・ジャパンとのライセンス契約が2024年12月に終了するため、その後継ブランドとして「ベイカー・ストリート」を位置づけているのです。
🏴 ベイカー・ストリート復活戦略
項目 | 詳細内容 |
---|---|
ターゲット層 | 30~40代(従来より若年層拡大) |
価格戦略 | ザ・スコッチハウスより3割程度価格を下げ |
店舗展開 | 全国71店舗(既存スコッチハウス店舗を改装) |
売上目標 | 3年以内に30億円 |
ポール・スチュアートとの合算目標 | 100億円規模 |
なぜベイカー・ストリートを復活させるのかについて、加藤郁郎副社長は「かつては25〜35歳を中心に高い支持を集めていたブランド。当社が得意とするブリティッシュテイストにもマッチしており、ポートフォリオ戦略の上でも合理的と判断した」と説明しています。
復活する「ベイカー・ストリート」の商品ラインナップと価格帯は以下の通りです:
- シャツ: 1万4300〜2万9700円
- パンツ: 1万8700〜3万3300円
- ジャケット: 3万9600〜7万1500円
- アウター: 4万6200〜9万3500円
特に注目すべきは、エントリー商品の充実です。ロゴTシャツを1万1000〜1万3000円と値ごろに設定し、チェック柄の帽子や手袋などの雑貨も用意することで、新規顧客の獲得を狙っています。
店舗デザインもベイカー・ストリート駅をイメージしたストーングレーや木目調を用い、クリーンでモダンな空間を作るとのことです。このような具体的な戦略により、三陽商会は着実に新たなブランド育成を進めているのです。
バーバリー時代の品質と価格帯を振り返る
三陽商会とバーバリーの黄金時代を振り返ると、その品質の高さと適正な価格設定が成功の要因だったことがわかります。特に「バーバリー・ブルーレーベル」と「バーバリー・ブラックレーベル」は、本国バーバリーにはない日本独自のラインとして大成功を収めました。
バーバリー時代の品質的特徴として以下が挙げられます:
🏆 三陽商会バーバリーの品質的優位性
要素 | 内容 |
---|---|
日本人体型対応 | アジア人の体形に合わせたパターン設計 |
独自デザイン | 日本の好みに合わせた若々しいスタイリング |
製造技術 | 国内自社工場での高度な縫製技術 |
品質管理 | 業界初の自社ブランド織ネーム採用 |
素材選定 | 英国らしさを保ちつつ日本の気候に適応 |
価格帯については、当時のバーバリーは高級ブランドでありながら、日本市場に適した設定がなされていました。トレンチコートで15万円~25万円程度、シャツやポロシャツで1万円~2万円程度と、品質に見合った価格設定でした。
この価格帯が中間層に受け入れられた理由は、単なる高級ブランドではなく「手が届く憧れのブランド」として位置づけられていたからです。特に若い世代にとって、初めて購入する本格的なブランド品として選ばれることが多かったのです。
品質面での評価も非常に高く、特にトレンチコートの耐久性は定評がありました。「一生もの」として購入する顧客も多く、親から子へと受け継がれるケースも珍しくありませんでした。この品質の高さが、ブランドロイヤリティの醸成につながっていたのです。
現在の三陽商会ブランドも、この品質へのこだわりは継承されています。国内自社工場での製造体制は維持されており、バーバリー時代に培った技術とノウハウが活かされています。価格帯も適正に設定されており、品質と価格のバランスを重視した戦略が続けられています。
現在の三陽商会ブランドラインナップ
現在の三陽商会は、バーバリー一極集中から多様化戦略へと大きく舵を切っています。基幹7ブランドを軸とした現在のラインナップは、リスク分散と安定収益の確保を目的とした戦略的な構成となっています。
2024年現在の主要ブランド構成を詳しく見てみましょう:
👔 現在の三陽商会ブランドポートフォリオ
カテゴリ | ブランド名 | ターゲット | 特徴 |
---|---|---|---|
英国系 | マッキントッシュ ロンドン | 30-50代 | 英国伝統の洗練されたスタイル |
英国系 | マッキントッシュ フィロソフィー | 20-40代 | よりカジュアルなライン |
英国系 | クレストブリッジ | 20-40代 | バーバリーの後継的位置づけ |
米国系 | ポール・スチュアート | 30-50代 | アメリカントラッドの代表格 |
欧州系 | エポカ/エポカ ウォモ | 25-45代 | イタリアンテイストのエレガンス |
英国系 | ベイカー・ストリート(2025年復活予定) | 30-40代 | ブリティッシュトラッドの定番 |
各ブランドの売上目標は、それぞれ100億円規模に設定されており、これが実現すれば総売上高700億円という規模になります。これは、バーバリー全盛期の売上高に匹敵する水準です。
現在の販売チャネル戦略も多様化しています:
- 百貨店: 依然として主力チャネル(売上比率約65.8%)
- EC販売: 急成長分野(2019年度目標80億円)
- 直営店: 路面店とショッピングモール店舗
- アウトレット: 在庫消化とブランド認知度向上
特にEC事業の成長は目覚ましく、コロナ禍での外出自粛期間中も売上を維持する重要な役割を果たしました。デジタル化への対応が、三陽商会復活の一因ともなっています。
今後の展開予定として、2025年春夏に「ベイカー・ストリート」が復活し、さらなるブランドポートフォリオの充実が図られます。また、AIを活用した店舗最適化システムの導入など、テクノロジーを活用した効率化も進められています。
このように、現在の三陽商会は単一ブランド依存のリスクを回避し、多角化による安定経営を実現しています。バーバリーという「金看板」を失った痛手から学び、より強靭な経営基盤を構築したと言えるでしょう。
三陽商会の劇的な業績復活の全貌
- 大江社長就任による構造改革の成功要因
- 売上重視から利益重視への転換が復活の鍵
- 在庫コントロール徹底で消化率向上を実現
- 販管費削減と不採算店舗統廃合の効果
- プロパー販売強化と値引き抑制の成果
- コロナ禍を乗り越えた戦略的判断
- まとめ:三陽商会のバーバリー後復活戦略
大江社長就任による構造改革の成功要因
2020年5月に三陽商会の社長に就任した大江伸治氏の手腕が、同社の劇的な復活を支えています。大江氏は三井物産出身で、ゴールドウイン再建の経験を持つアパレル業界の再建プロとして知られています。
大江社長の基本的な経営哲学は非常にシンプルで実践的です。WWDジャパンのインタビューで「当たり前の手を打っただけだ。僕がゴールドウイン時代でやったことをそのまま踏襲したに過ぎない」と述べています。しかし、この「当たり前のこと」を徹底的に実行することこそが、三陽商会復活の核心だったのです。
💪 大江社長の構造改革の3つの柱
改革分野 | 具体的施策 | 効果 |
---|---|---|
コストマネジメント | 販管費を身の丈に合ったレベルまで削減 | 収益性の向上 |
リスクマネジメント | 在庫コントロールの徹底 | キャッシュフロー改善 |
実力値経営 | 楽観的目標を排除した現実的な売上設定 | 確実な目標達成 |
**「決断すれば必ず実行する」**という大江氏の経営スタイルは、それまでの三陽商会の「努力目標」的な改革とは一線を画していました。同氏は「皆さんは改革、改革というけれど、多くの場合は『こうなったらいいな』という努力目標にすぎない。努力目標は十中八九『やってみたけどダメでした』で終わる」と指摘しています。
ゴールドウイン再建時の経験を活かし、大江氏は着任直後から品番とSKUを半分にするよう指示を出しました。「みんな目を白黒させていたよ」と笑いながら振り返っていますが、この思い切った改革が後の成功につながったのです。
73歳での社長就任という年齢的なハンディを感じさせない強力なリーダーシップで、大江氏は短期間で三陽商会の企業文化を変革しました。調査の結果、就任から3年で営業黒字化を達成したことは、その手腕の確かさを物語っています。
重要なのは、大江氏が単なるコストカッターではないということです。同氏は「売り上げは追うな、中身を追求してくれ」という方針で、利益の質を重視した経営を実践しています。この哲学が、三陽商会の持続可能な復活を支えているのです。
売上重視から利益重視への転換が復活の鍵
三陽商会復活の最も重要な要因は、「売上至上主義」からの脱却でした。大江社長が就任前の三陽商会について「売上目標を追うあまり、売り切ることが到底不可能な量の在庫を抱え、利益を伴わない売上を積み上げて数字をつくっていた悪弊」があったと指摘している通りです。
従来の三陽商会の問題点を数値で見ると、その深刻さがよくわかります:
📉 売上至上主義時代の問題数値
指標 | 問題の内容 | 影響 |
---|---|---|
売上総利益率 | 46%~48%(危険水域) | 大幅な値引き販売の常態化 |
値引き率 | 推定45%程度 | ほとんどの商品を半額セールで販売 |
在庫回転率 | 非効率な水準 | キャッシュフロー悪化 |
営業利益率 | 6期連続赤字 | 本業での収益性ゼロ |
利益重視への転換は、東洋経済オンラインのインタビューで大江氏が明確に表明しています:
「売り上げ、売り上げ」って言うけれど、売り上げを目的に経営を行うと、どこかで背伸びして、いろんな失敗につながってしまう。重要なのはブランド価値を高めること。中身を伴った(値引きセールに頼らない)売り上げをどれだけ作れるかが勝負になる。
この考え方の転換により、2023年2月期の業績は劇的に改善しました。売上総利益率は62.0%まで向上し、7期ぶりの営業黒字22億円を達成したのです。
**「無理な売上を捨てる勇気」も重要な要素でした。大江氏は意図的に売上を減らし、その分在庫も削減しました。2021年2月期には前年比で大幅減収となりましたが、これは将来の収益性向上のための「痛み」**だったのです。
ゴールドウイン時代の経験も活かされています。大江氏は「売り上げは追うな、中身を追求してくれ」と現場に指示し、「それを徹底した結果、気がついたら売上高は1000億円になっていた」という成功体験を三陽商会でも再現しようとしているのです。
この利益重視の経営哲学により、三陽商会は単なる一時的な回復ではなく、持続可能な成長基盤を構築することができました。売上規模よりも収益性を重視する経営は、変化の激しいアパレル業界において非常に重要な戦略と言えるでしょう。
在庫コントロール徹底で消化率向上を実現
三陽商会復活の技術的な核心は、徹底的な在庫コントロールにありました。大江社長は「商品力や販売力の向上によって消化率を上げることはできない。それは努力目標だ」と断言し、入口規制による確実な在庫管理を実践したのです。
在庫削減の実績は以下の通り驚異的です:
📦 在庫コントロールの成果
項目 | 2018年12月末 | 2022年2月末 | 削減効果 |
---|---|---|---|
期末在庫高 | 141億円 | 80億円 | 43%削減 |
売上高在庫比率 | 30.8% | 20.3% | 大幅改善 |
消化率 | 低水準 | 99%達成可能レベル | 劇的向上 |
「消化率を上げるには入り口規制」という大江氏の方針は、アパレル業界の常識を覆すものでした。多くの企業が商品力向上や販売力強化で消化率改善を図ろうとする中、三陽商会は仕入れ段階での厳格な管理に重点を置いたのです。
具体的には、品番とSKUの徹底的な絞り込みを実施しました。大江氏は着任してすぐに「品番とSKUは半分にしろ」と号令をかけ、商品ラインナップの大幅なスリム化を断行しました。これにより、一つ一つの商品により多くのリソースを集中できるようになったのです。
GMROI(Gross Margin Return On Inventory Investment)の改善も顕著でした。この指標は「いかに少ない在庫で、より多くの粗利益を得られるか」を表すもので、三陽商会はV字回復を実現しています。
調査の結果、2024年2月期の仕入金額は売上高613億円に対して221億円となっており、2017年12月期の約75%の仕入れで同じ程度の売上を上げることができています。これは在庫効率の劇的な改善を意味します。
デジタル技術の活用も在庫管理に貢献しています。三陽商会はABEJAと業務提携し、店舗解析サービス「ABEJA Insight for Retail」を導入しました。店舗内の顧客動線を分析し、データに基づいた商品配置最適化を実現しています。
この在庫コントロールの徹底により、三陽商会はアパレル業界特有の「見切り販売」依存から脱却することができました。プロパー価格での販売比率が向上し、ブランド価値の毀損を防ぐことにも成功しているのです。
販管費削減と不採算店舗統廃合の効果
三陽商会の復活において、販管費削減は避けて通れない課題でした。大江社長は「販管費を身の丈にあったレベルまで引き下げること」を重要な柱として位置づけ、聖域なき改革を断行したのです。
具体的な販管費削減施策は以下の通りです:
💰 販管費削減の主要施策
分野 | 削減内容 | 効果額 |
---|---|---|
人件費 | 希望退職の実施 | 約20億円削減 |
広告宣伝費 | 効果の低い広告の見直し | 大幅圧縮 |
不動産賃料 | 不採算店舗の統廃合 | 約21億円削減 |
その他経費 | 各部門での無駄の排除 | 継続的削減 |
希望退職の実施は、最も困難な決断の一つでした。2017年度に実施された希望退職により、人件費は約20億円削減されましたが、これは単なるリストラではなく「適正規模への調整」という位置づけでした。同時に、残った社員の生産性向上にも取り組み、一人当たりの付加価値創出を高めています。
不採算店舗の統廃合も重要な施策でした。バーバリー時代に急拡大した店舗網を見直し、収益性の低い店舗からは撤退を決断しました。一時的に売上減少を招くものの、店舗当たりの収益性は大幅に改善されています。
広告宣伝費の見直しでは、費用対効果の測定を徹底し、効果の薄い媒体からは撤退しました。代わりに、デジタルマーケティングへのシフトを進め、より効率的な顧客アプローチを実現しています。
この販管費削減により、**2023年2月期の販管費率は58.1%**となりました。新会計基準の影響もありますが、実質的な削減効果は確実に現れています。特に、売上高に対する固定費の比率が下がったことで、事業の収益性が大幅に改善されました。
重要なのは「ただ削るだけ」ではないということです。大江氏は削減と同時に、残った部門への投資も行っています。特に、EC事業やデジタル化への投資は継続し、将来の成長基盤は維持しています。
現在の三陽商会の販管費構造は、以前と比べて格段に効率的になっています。固定費負担が軽くなったことで、売上変動に対する収益性の安定性も向上しており、次の成長局面に向けた準備が整っているのです。
プロパー販売強化と値引き抑制の成果
三陽商会復活の質的な改善で最も重要なのは、プロパー販売の強化と値引き抑制でした。これは単なる売上回復ではなく、ブランド価値の回復そのものを意味する取り組みだったのです。
プロパー販売強化の背景には、アパレル業界全体の構造的問題がありました。多くのブランドが値引き販売に依存し、顧客が「安くなるまで待つ」という購買行動を助長していたのです。三陽商会も例外ではなく、売上総利益率46%という数値は、ほぼ半額セールが常態化していたことを示しています。
値引き抑制の具体的成果:
🎯 プロパー販売強化の成果
指標 | 改革前(2020年2月期) | 改革後(2023年2月期) | 改善幅 |
---|---|---|---|
売上総利益率 | 59.2% | 62.0% | +2.8ポイント |
プロパー販売比率 | 低水準 | 大幅改善 | 収益性向上 |
値引き率 | 高水準 | 抑制成功 | ブランド価値向上 |
プロパー販売強化の手法として、三陽商会は以下の施策を実施しました:
- 商品企画の質向上: 顧客ニーズにより的確に応える商品開発
- 適正な仕入れ量設定: 過剰在庫を作らない入口管理
- 販売スタッフの教育: プロパー価格での販売スキル向上
- ブランド価値の再構築: 値引きに頼らないブランド戦略
「プロパー消化」という考え方も重要です。これは正規価格での完売を目指すもので、値引き販売を前提としない商品計画を立てることを意味します。大江氏は「中身を伴った売り上げをどれだけ作れるかが勝負」と述べており、この思想が徹底されています。
値引き抑制の心理的効果も見逃せません。顧客が「どうせ安くなる」と思わなくなることで、購買行動が正常化されるのです。これにより、ブランドに対する顧客の認識も「安売りブランド」から「適正価格の良質ブランド」へと変化していきます。
調査の結果、2024年2月期も増収増益を達成しており、プロパー販売強化の効果が持続していることがわかります。値引きに頼らない健全な販売構造が定着し、ブランド価値の毀損を防ぐことに成功しているのです。
この取り組みにより、三陽商会は**「安売り体質」からの完全脱却**を果たしました。プロパー販売の強化は、短期的な売上増加よりも長期的なブランド価値向上を重視した戦略であり、真の意味での企業復活を実現したと言えるでしょう。
コロナ禍を乗り越えた戦略的判断
三陽商会の復活物語において、コロナ禍への対応は重要な試金石となりました。2020年に大江社長が就任した直後にパンデミックが発生し、まさに「ダブルパンチ」の状況だったのです。
コロナ禍1年目(2021年2月期)の厳しい現実:
🦠 コロナ禍の影響数値
項目 | 影響内容 | 対応策 |
---|---|---|
営業赤字 | 89億円(売上高の23%) | 構造改革の加速 |
店舗休業 | 百貨店中心の販売網が大打撃 | EC強化へシフト |
売上減少 | 大幅な来店客数減少 | デジタル化推進 |
しかし、大江氏は**この危機を「改革の好機」**と捉えました。「無理な売上を捨てる」方針により、コロナ禍による売上減少を構造改革のチャンスとして活用したのです。多くの企業が守りに入る中、三陽商会は攻めの改革を継続しました。
EC事業の急速な成長もコロナ禍での重要な成果でした。外出自粛により実店舗での販売が困難になる中、オンライン販売が売上を下支えしました。2016年度のEC売上高42億円から、年率24%の成長計画を立てていましたが、コロナ禍でその重要性がさらに高まったのです。
百貨店依存からの脱却も加速しました。従来は百貨店での売上比率が高かった三陽商会ですが、コロナ禍での休業要請により、販路の多様化の必要性を痛感しました。EC販売の強化に加え、路面店やショッピングモールでの展開も検討されています。
デジタル技術の導入も進みました。ABEJAとの業務提携による店舗解析システムの導入は、コロナ禍での「密」を避けた効率的な店舗運営にも貢献しています。AI技術を活用した店舗最適化により、限られた来店客数でも効率的な販売を実現しています。
2023年2月期以降の回復は目覚ましく、「緊急事態宣言やまん延防止等重点措置といった行動制限につながる規制が実施されなかった」ことで販売が堅調に推移しました。特に、インバウンド売上の復活も追い風となっています。
調査の結果、2024年2月期中間期のインバウンド売上は13億円に達しており、コロナ前の訪日外国人による「爆買い」の復活を示しています。三陽商会の英国系ブランドは、特に中国や東南アジアの富裕層に人気が高く、この傾向は今後も継続すると予想されます。
コロナ禍という未曾有の危機を乗り越えた三陽商会の経験は、危機管理能力の高さを証明しています。ピンチをチャンスに変える経営判断により、より強靭な企業体質を獲得したと言えるでしょう。
まとめ:三陽商会のバーバリー後復活戦略
最後に記事のポイントをまとめます。
- 三陽商会とバーバリーの関係復活は現時点では実現していない
- 2015年のライセンス契約終了により「バーバリーショック」が発生した
- 6期連続営業赤字という深刻な経営危機に陥った
- 2020年5月に大江社長が就任し構造改革に着手した
- 売上至上主義から利益重視経営への転換を図った
- 徹底的な在庫コントロールにより消化率を大幅改善した
- 販管費削減と不採算店舗統廃合を断行した
- プロパー販売強化と値引き抑制によりブランド価値を回復した
- コロナ禍を改革の好機として活用した
- 2023年2月期に7期ぶりの営業黒字を達成した
- EC事業強化により販路の多様化を実現した
- デジタル技術導入で店舗運営を最適化した
- 基幹7ブランド戦略によりリスク分散を図った
- 「ベイカー・ストリート」復活で新展開を開始した
- インバウンド需要復活も業績回復に貢献した
調査にあたり一部参考にさせて頂いたサイト
- https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2312/22/news030.html
- https://full-kaiten.com/news/blog/6446
- https://www.zakzak.co.jp/article/20240728-XOTDE2Y52VKRHO3BDWMUDZJ7ZA/
- https://note.com/bizgem_1220/n/n9d9ff12819f8
- https://media.moneyforward.com/articles/8754
- https://www.wwdjapan.com/articles/1950030
- https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/02369/
- https://www.wwdjapan.com/articles/1686309
- https://toyokeizai.net/articles/-/158620
- https://imakara.traders.co.jp/articles/3100
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